こしょう漬

小谷伝統の「こしょう漬」と3つの秘密

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小谷村を訪れた方々がまず驚くのが、ピンク色に染まった大根の漬物である。

これを小谷では、「こしょう漬」と呼ぶ。
塩漬けの淡白な味の漬物にピリッと辛い素朴な漬物である。

2kosyou<写真1 こしょう漬>

「ピンク色の大根?」を想像すると駄菓子などで売られている、いわゆる「さくら大根」を想像する。
しかし、小谷村で受け継がれるこしょう漬は全く別のものであり歴史と文化、そして特異環境が産み出した、独特の漬物である。

 

小谷村の家庭ではどこに行っても出てくる定番の漬物であるが、実は今のところ全く外部の地域には出回っていない小谷村の秘蔵っ子

 

そんな小谷伝統の「こしょう漬」の秘密を3つ紹介します。

 

まずは代表的なレシピから

 

大根のこしょう漬

材料

  • 大根 一本
  • 青こしょう(お好みの分量で)
  • 塩水(あら塩20%〜25%)
  • ビーツ(ビート) 一個

 

漬け方

①大根が6割程度かぶる程度の水に塩(20%〜25%)を加え、煮立たせ一晩冷まします。

②冷ました塩水に皮をむき、半分程度に切った大根を入れます。
※早く漬けたい場合はひと口大に切ってから漬けます。

③大根と同時に青こしょうとビーツを入れ、涼しいところで保管します。

食べごろ

大根は2〜3日程度で浅漬けとして食べられます。
長期保存もできますが温度に注意してください。
小谷村では大量に作る家庭が多いため、冷蔵庫には入れませんが、夏の暑い時期には凍らせたペットボトルなどで温度調整をします。
他地域で作る場合は冷蔵庫で保存しておくのが好ましいでしょう。

 

小谷流のコツ!!

漬け水は変える必要はありません

使えば使うほど、味が漬け水に染み込みその家庭の味に仕上げて行くのが小谷流です。
ただし、温度管理に気をつけ、こまめにかき混ぜてください
もし表面に薄い皮膜のようなものができた場合は鍋に移し替え再度沸騰させてください。
※薄い皮膜:産膜酵母によるもので、つけ汁の上に皮膜として現れる場合がありますが、漬け水が腐っているわけではありません。

こしょう漬はきゅうりやミョウガ、ナスなど様々なものを漬けられます。

再度漬ける際は塩や青こしょうを適宜追加してください。
ちなみにビーツを使わなくても、「こしょう」が入った漬け水で作る漬物を「こしょう漬」と総称していうこともあります。

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秘密① 実はこしょうは胡椒ではない!!

レシピをご覧になった方は「こしょう」とひらがなで書いてきたことに気づいただろうか?!

「青こしょう?」

『実は小谷村では「唐辛子」のことを「こしょう」と呼びます!!』

有名なところだと、「柚子胡椒」と言うとピンとくる方が多いのではないだろうか。
全国的に見ても、九州の一部と長野の北部のみ呼ばれる珍しい呼び方。

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なぜ唐辛子のことを「こしょう」と呼ぶのか。

一説には、唐との交流があったころ、「唐を枯らす」と音が似ていたため、唐辛子という呼び方を避けた説。
※ここでの唐は中国のみではなく、他国との交流を指す。

諸説あるが、小谷村を含む長野の北部では唐辛子のことを、現在でも「こしょう」という呼び定着している。
ちなみに小谷村では、「こしょう」と言うと唐辛子全般を指し、青こしょうと言うと青唐辛子を指す。
ただ、赤唐辛子は「赤こしょう」とは一般的に言わない。
この辺は地域のニュアンスであり、説明が難しい部分である。

秘密② 赤く色付け

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こしょう漬の最大の特徴はビーツで色付けをするところである。
なぜ、色付けをするのかは正確には不明であるが、漬物や山菜などの青物が多いため、食卓を彩るため赤く色付けしたのではないかと察する。
また、村のかあちゃん達の遊び心だったという話もある。

現在では、ビーツで色付けを行うが、一昔前は食紅を使っていた家庭もある。
また、一部の地区ではアカビユの葉で着する風習もあった。
アカビユとは、ヒユ科の一年草で、鉄分やカルシウム、ビタミンCなどが豊富であり、昔から天然の着色料として利用されてきた。
アカビユは現在ではほとんどが姿を消したが、小谷村の大網地区に自生していることが報告書にて確認されている。ただ、他の地区にも存在が確認でき、当時の名残だろうか、ポツンと生えていることもある。

 

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<写真2 アカビユ>

秘密③ 「こしょう」を入れる理由

小谷村には「こしょう」を入れた漬物が多く見られる。
小谷村山菜加工場でも「青こしょうのしょうゆ漬け」が商品化されていた。(現在は製造していません。)
また、小谷村の特徴として、「青こしょう」が好まれる。
村のとうちゃんは「青こしょう」の方が風味がよく、奥深いうまみがあるという。
これは、単なる辛味を求めているだけではなく、一つの野菜として捉えられてるためではないかと察する。

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前段が長くなったが、実はこしょうを漬物に入れる文化は理にかなっている
漬物は長期保存のためには塩漬けが基本である。
小谷村は日本海が近く塩が運ばれていたと言われる古道(塩の道)も存在し、塩に関して身近な地域であったとされるが、塩はその昔小谷村でも高級であったと考えられる
食料保存のためには、大量の塩が必要であったはずであるが、塩の量にも限りがあったはず
そこで生まれた知恵が「こしょう」を入れることであったのではないかと考えられる。

実は「こしょう」に含まれるカプサイシンには抗菌効果防虫に効果・発酵の抑制効果があると言われている。
世界的に見ても、インドや東南アジアなどの比較的暑い地域で利用されることが多く、暑さによる食材の傷みを予防する効果がある。
また、韓国のキムチにも大量の唐辛子が入っているが、それも浅漬けによる菌の増殖を抑え同時に発酵の抑制効果があるとも言われている。

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小谷村は暑さとは正反対の豪雪地帯だが、雪の時期のために食料を長期間保存しなくてはならない環境である。その知恵として「こしょう」を塩漬けの補助材料として使用し、定着してきた独特の食文化の一つがこしょう漬であると考えられます。

いかがだったでしょうか?
今回はこしょう漬けから見た小谷村の食文化について「3つの秘密」と題し紹介しました。
昔の知恵はすごいものですね。

ぜひ家庭でお試しください!
また、小谷村を訪れた際はこしょう漬を探してみてください!!


参考文献・引用

  • つけものの味ふるさとの味:長野県農業改良協会 S51年
  • https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%94%90%E8%BE%9B%E5%AD%90
  • http://www.oishii-shinshu.net/recipe/recipe-daihoku/3627.html
  • 写真1:http://www.otarimura.net/sql/22.html
  • 写真2:平成24年度小規模事業者地域力活用実施結果報告書 小谷村商工会

 

“otariduke”

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